BLOG ブログ

2026.10.05

狭小間取りテクニック

こんにちは、林です。

土地を探していると、「いい場所だけれど、少し小さいな」と感じる土地に出会うことがあります。

もう少し広い土地を、と探していくと、今度は土地にかかる費用が大きくなる。

場所を変えれば選択肢は増えるかもしれませんが、通勤や通学、今までの生活圏を考えると、簡単には決められないですよね。

そんなとき、

「この広さで、ちゃんと暮らしやすい家になるのかな」

と心配になる方もいると思います。

ただ、設計をしている私からすると、家の「広さ」は土地や床面積の数字だけでは決まらないと感じています。

もちろん、実際の面積は変えられません。

でも、視線がどこまで届くか、天井がどう広がっているか、壁でどこまで区切るかによって、人が感じる広さは変わります。

狭い土地を無理やり広く見せる、という話ではありません。

限られた面積だからこそ、余計な分断をつくらず、本当に必要な場所へ面積を使う。

今回は、狭小住宅を考えるときに、私が間取りで気をつけたいと思っていることを書いてみます。

 

土地探しでは、広さだけを追いかけない

家づくりを始めると、土地の「坪数」が気になると思います。

希望のエリアで探していても、

「あと少し広かったら」
「もう少し間口があれば」

という土地もありますよね。

もちろん広い土地には、広い土地なりの良さがあります。

設計の自由度も取りやすくなります。

ただ、その広さを求めることで土地の費用が大きくなり、建物やその後の暮らしにかけたい予算とのバランスが変わることもあります。

ですから私は、土地の面積だけで良し悪しを決める前に、「この土地なら、どんな間取りができるだろう」と考えてみることも大切だと思っています。

狭小地で特に気になるのが、廊下などの移動だけに使う面積です。

廊下も必要な場所ではありますが、限られた床面積の中で長い廊下をつくれば、その分、家族が普段過ごす場所は小さくなります。

だったら、家族が毎日使う場所そのものを家の中心にできないか。

狭小間取りでは、そんな考え方から始めることがあります。

 

共用スペースを真ん中にすると、間取りがつながる

私が狭小間取りで意識していることの一つが、共用スペースを建物の真ん中に持ってくることです。

リビングやダイニングなど、家族みんなが使う場所を中心に置き、そこから必要な場所へつなげていく。

そうすると、「移動するためだけの場所」を抑えながら間取りを組み立てやすくなります。

朝、家族がそれぞれの場所から出てくる。

誰かがキッチンで朝食の準備をしていて、子どもがその横を通る。

帰宅したときにも、家族のいる場所を通って自分の場所へ向かう。

そういう何気ない日常を考えると、共用スペースが真ん中にあることには、面積以外の意味もあると思います。

狭小住宅だからといって、小さな部屋をパズルのように詰め込めばいいわけではありません。

部屋を一つずつ壁で囲ってしまうと、図面ではきれいに整理されていても、実際に立ったときに少し窮屈に感じることがあります。

だから私は、「何帖取れたか」と同じくらい、「その何帖がどこにつながっているか」を気にします。

面積を増やせないなら、つながり方を考える。

狭小住宅では、この視点が結構大切ではないでしょうか。

 

ストリップ階段やコボットで、視線を止めない

次に考えたいのが、視線の抜けです。

たとえば、リビングの横に階段があるとします。

壁で囲われた階段であれば、視線はその壁で止まります。

同じ場所にストリップ階段があると、踏み板の間や階段の向こうまで視線が伸びます。

階段に必要な面積がなくなるわけではありません。

でも、人が立ったときの感覚は少し変わります。

これは図面だけでは、なかなか伝わりにくいところです。

コボットを使うのも、同じような理由です。

必要な役割を持たせながら、壁ですべてを塞がず、向こう側まで見えるようにする。

狭小住宅では数十センチをどう使うかも大切ですが、同時に「目がどこまで届くか」も大切だと思っています。

視線が止まる場所が多いと、人はそこまでを一つの空間として感じます。

反対に、その先が見えると、空間同士につながりを感じやすくなります。

何でも開放的にすればいい、という意味ではありません。

落ち着きたい場所、隠したい場所、音を区切りたい場所もあります。

大事なのは、壁が本当に必要なのか、一つずつ考えることではないでしょうか。

 

間仕切りを天井まで上げないという考え方

間仕切りも、狭小住宅の感じ方を左右します。

一般的には、空間を分けるなら床から天井まで壁をつくります。

でも、用途によっては必ずしも天井まで上げる必要がない場合もあります。

間仕切りの上を少し開けておけば、場所としては分かれていても、天井面はその先まで続いて見えます。

「ここからここまで」と完全に切ってしまわず、ゆるやかに分けるイメージですね。

私は、この「ゆるやかに分ける」という考え方が、限られた面積の家では結構大切だと思っています。

家族だから全部オープンでいい、ということでもありません。

一人で落ち着きたい時間もありますし、生活していれば見せたくないものも出てきます。

だから、必要なところはきちんと分ける。

一方で、必要のないところまで壁で閉じない。

家の中を細かく箱に分けるのではなく、暮らしに合わせて、つなぐところと分けるところを考える。

そうすると、面積そのものは同じでも、少し呼吸のしやすい空間になっていくと思います。

 

2階リビングなら、勾配天井で上への広がりをつくる

狭小地では、2階リビングという選択肢もあります。

そして2階にリビングを配置するのであれば、屋根の形を生かした勾配天井をつくれることがあります。

これも私は、狭小住宅と相性のいい考え方の一つだと思っています。

床面積は増えていません。

それでも天井が上へ伸びることで、空間の体積は大きくなります。

同じ帖数でも、水平な天井の部屋と、屋根に沿って上へ広がっていく部屋では、ソファに座ったときの感覚が違います。

家の広さを考えるとき、「何坪」「何帖」という数字に目が行きます。

でも、実際の暮らしでは、私たちは床面だけを見ているわけではありません。

キッチンに立って、ふと顔を上げる。

リビングのソファでくつろぎながら天井を見る。

そこに上方向への余白があると、床面積とは別の開放感が生まれることがあります。

もちろん、2階リビングにはご家族の暮らし方との相性がありますし、どの土地でも勾配天井にすればいいということではありません。

その土地、その家族だから生かせる方法なのか。

そこを一緒に考えることが大切だと思います。

 

狭小住宅は、「小ささ」より「感じ方」を考えてみる

土地を探していると、希望する場所と土地の広さ、そして予算の間で迷うこともあると思います。

そんなとき、少し小さい土地を見て、

「ここでは無理かな」

とすぐに諦めてしまうのは、少しもったいないかもしれません。

共用スペースを建物の真ん中に持ってくる。

ストリップ階段やコボットで視線の抜けをつくる。

間仕切りを必要以上に天井まで上げない。

2階リビングであれば、勾配天井を生かして上への広がりをつくる。

こうした工夫は、家そのものを大きくする方法ではありません。

限られた面積の中で、閉じすぎない、分けすぎない、無駄な場所を増やしすぎない。

そうやって暮らしに必要な場所へ、きちんと面積を使うための考え方です。

私自身、家づくりでは「広ければ広いほどいい」とは思っていません。

広さよりも、その家族にとって必要な場所がちゃんとあり、毎日の動きに無理がなく、ふとした瞬間に気持ちよく感じられることのほうが大切ではないでしょうか。

土地探しの途中で「少し狭いかな」と思う土地に出会ったら、面積だけを見るのではなく、一度その土地に建物を入れて考えてみてください。

思っていたのとは少し違う可能性が見えてくることもあります。

土地の広さではなく、その中でどんな暮らしができるか。

私たちも、そんなところから一緒に考えていければと思っています。

ブログ一覧に戻る